2024年度年次大会のお知らせ
(対面開催ですが、会員のみ、zoom参加もあります!会員の方は、10/1にお送りしたメールをご確認ください。会員の方でメーリングリストに届かない/入っていない方は、事務局にお知らせください)
日時
2024年10月27日(日)10:00~17:30
会場
同志社大学今出川校地烏丸キャンパス志高館 (地下鉄烏丸線「今出川駅」1番出口より北に徒歩5分)
参加費
会員:無料、一般:1000円、学生・正規雇用以外:500円
スケジュール
10:00~11:00 自由論題
「「慰安婦」問題からパレスチナへ ー「連帯」を構築する女性たち」
報告者 金美穂さん(同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士課程後期)
討論者 宜野座綾乃さん(琉球大学)
11:00~12:00 総会
12:00~13:30 ランチ休憩
13:30~17:30 シンポジウム
「何が戦争を駆動するのか――加害の論理と抵抗の現場」
パネリスト 早尾貴紀さん(東京経済大学)
市川ひろみさん(京都女子大学)
親川裕子さん(琉球大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程)
討論者 岡野八代さん(同志社大学)
共催:同志社大学FGSSセンター、同志社大学アメリカ研究所第7部門研究「冷戦と性暴力」、科研費基盤研究B「フェミニズム理論による新たな国家論の構築-ケア概念と安全保障概念の再構想から」 (課題番号 23H03654)
≪同志社大学今出川校地烏丸キャンパスへのアクセス≫は以下のURLから。
https://www.doshisha.ac.jp/information/access/index.html#access_karasuma
シンポジウム趣意書
「何が戦争を駆動するのか――加害の論理と抵抗の現場」
現在、ロシアのウクライナに対する軍事侵攻は2022年2月24日以降2年以上、イスラエルのガザ侵攻は2023年10月7日以降1年、おびただしい犠牲者を生み出し続けている。
ガザのパレスチナ人に対する軍事侵攻の暴力の犠牲者は、多くが女性と子どもである。国連人権高等弁務官事務所の専門家たちによれば、女性と少女に対する性的暴行の報告も続いており、その中にはイスラエル占領軍に拘束された女性と少女への性的暴行の報告が複数あるという。
パレスチナの場合、第二次大戦後の国連の分割案によるイスラエルの国家建設が、元々その地に住んでいた多数のパレスチナ人を排除するもので、多くの難民を生み出してきた。イスラエルは国際法違反の分割地拡大と占領を続けており、それは第二次大戦の帝国主義、レイシズム、植民地支配を髣髴とさせるものがある。
ロシアもまた今回の侵攻の前にクリミア半島を占領、さらに侵攻直前にはウクライナ東南部を占領、ロシアに併合すると宣言し、自国の領土に繰り入れようとした。占領地で「ロシアと国民を守るため」にウクライナ軍と欧米の脅威に対する「正当防衛」を主張している。
かつては日本も、アジア各地を侵略し植民地を拡大した歴史的経験がある。現在の日本社会においても、戦争放棄を誓う平和憲法の改憲を目指し、集団自衛権を認める安保法制化により、自衛隊が米軍と一体化し、軍拡が進んでいる。
何が戦争を駆動し、誰がなぜ戦争を望み、また支持しているのか。そしてなぜ戦争と軍事攻撃、それに向けた準備を止めようとしないのか、これらの問いを突き詰めて考えるために、今年の大会シンポジウムでは、「何が戦争を駆動するのか――加害の論理と抵抗の現場」というテーマを設定した。
まず、現在のイスラエルのパレスチナへの軍事攻撃/ジェノサイドに対する支持の論理を考えることを通して、「私たち」にも共通する傾向や論理、加担のメカニズムの作用について批判的に考えたい。
しかし他方、現に苛烈な軍事攻撃を行う国や地域にも、そして軍事化が進められる国のなかにも、もちろん戦争に反対する動きがある。主に韓国とドイツの兵役拒否の運動から、困難な抵抗がどのように行われ、そこにどのような課題があるのか、そしてそこから私たちは何を学ぶことができるのかを考えたい。
戦争そのもののみならず、戦争に向けた軍備拡大には、そのプロセス自体が特定の人びとを暴力に晒すメカニズムがある。「国民」の安全の確保を理由にした軍事化そのものが、特定の、とりわけ歴史的に周辺化されてきた人びとを広い意味での戦争状態に追い込むことになる。特に沖縄ではそのような状況が、女性たちの人権を侵害して続いてきた。
このような軍備拡大と暴力に即して、戦争と軍備拡大を支持し、または暗黙に是認することで加担する「私たち」が何を行っていることになるのかを考えたい。
沖縄県で続発する米兵による性暴力とその隠蔽について日米政府に強く抗議し、日米軍備強化に反対します
2024年6月25日、沖縄県の報道機関が、沖縄県内でブレノン・ワシントン米空軍伍長が16歳未満の少女を誘拐し、性的暴力をふるった罪で裁判が開かれることを報道しました。この事件は2023年12月24日に起こっていたもので、すでに被疑者は2024年3月27日に起訴されていたこともわかりました。
日米安全保障条約の下で日本に駐留している米兵による犯罪は重大な問題です。特に在日米軍基地の約7割が集中している沖縄県では住民の日々の生活の安全の保障に直接、影響を及ぼす問題です。それにもかかわらず、日本政府は事件について沖縄県に知らせていませんでした。続く報道では2023年から2024年5月までに米軍関係者によって5件の性暴力事件が起こっていたこともわかりました(起訴2件、不起訴3件)。これらについても日本政府は沖縄県に知らせず、公表もしていませんでした。沖縄県警は警察庁に報告はしていましたが、沖縄県には報告していませんでした。外務省沖縄大使は、政治問題になることを懸念したために公表しなかった、と述べました。
しかし米軍が沖縄に駐留していることこそ、日米の安全保障条約によるもので、まさに政治問題です。日本政府の危惧は、沖縄県名護市辺野古での新たな米軍基地建設に反対する公約を掲げてきた玉城デニー知事と沖縄の人々が米軍駐留や沖縄への自衛隊配備の強化を問題にすることを避けたかったというものでしょう。実際に、2023年からは、辺野古の新基地建設に関して沖縄県の訴えを無効にするような日本政府による代執行、石垣・与那国島への自衛隊配備、うるま市の自衛隊基地へのミサイル配備、駐日米大使の与那国島訪問など、沖縄県での日米軍備強化が急速に、強引に進められています。
このような日米同盟の維持を優先させるために、沖縄に住む人々、特に性犯罪のターゲットとされる女性や子どもの安全と尊厳がないがしろにされることに、私たちは強く抗議します。そして、日本政府による性暴力事件の隠蔽によって被害者が沖縄県によるケアや保護を受ける機会を失ったかもしれないことを深く懸念します。
2023年12月の事件は被害者関係者からの通報によって沖縄県警が米軍に照会し、ワシントン被告が逮捕されました。しかし沖縄県警による捜査は任意で行われ、被疑者の身柄の引き渡しの要求をしていませんでした。7月11日に行われた公判で、ワシントン被告は行為を認めたものの、合意の上だったとして、容疑を否認しています。このような状況でも尚、被疑者は保釈され、嘉手納基地内にいます。米軍は被疑者のパスポートを取り上げているので逃亡の恐れはない、としています。日米地位協定の刑事裁判権に関する米国の優位性の問題もさることながら、日米地位協定で認められている、日本側への起訴後の被疑者引き渡しや1995年以降に日米間で合意された運用改善の実行さえも行わない日本政府の姿勢は自国の国民保護の責任を放棄するもので、決して許されません。
沖縄県内では米軍関係者による性犯罪が1945年から続いています。性犯罪は実際に起こった数と明らかになる数との差、いわゆる暗数が大きい犯罪です。その原因の一つは被害がいまだに被害者の恥とみなされる風潮です。日本政府が主要な外交政策の一つとして位置付けている、国連安保理決議1325号の実施政策「女性・平和・安全保障」では、紛争下での性暴力の根絶のために「恥ずべきは被害者ではなく、加害者だ」という認識を広める必要性が国際的に共有されています。しかし、日本政府は度重なる米軍による性暴力に関する情報を隠蔽してきた理由として「被害者のプライバシーの保護」や「被害者の名誉」までも挙げています。これは性暴力を根絶しようとする態度からは程遠いだけでなく、被害者が責められる風潮を助長するばかりです。
2023年12月の事件が明るみになってからも米軍は正式に謝罪をしていません。再発防止策も沖縄県警との協力態勢やこれまで何度も行われているリバティー制度について言及していますが、実効性はなく、再発防止に真剣に取り組んでいるとはとても考えられません。米国政府に対しても、私たちは沖縄県で続発する米兵の性暴力に関して、沖縄県と沖縄の人々に対して正式に謝罪するように求めます。そして、駐留米軍関係者による性暴力について調査を行い、防止のための実効性のある対策を講じることを求めます。
戦争や軍事基地と女性の人権の問題に取り組んできた「女性・戦争・人権」学会は、日米軍備強化に反対し、米兵による性暴力を絶対に許しません。
2024年8月28日 「女性・戦争・人権」学会
RAWAと連帯する会結成20周年記念イベント(「女性・戦争・人権」学会は本イベント京都会場の開催を共催いたします)
RAWA来日スピーキングツアー「ターリバーンの再支配から早3年
アフガニスタンのいま-女性と子どもたち、そして私たち」
【京都講演】
日時:2024年6月14日(金)18時半~(18時開場)
会場:ウイングス京都 セミナー室A・B
参加費:無料(カンパ制)
共催:「女性・戦争・人権」学会、清末愛砂室蘭工業大学大学院研究室
ツアー全体の詳しい情報は、チラシをご覧ください。画像が小さい場合は、下記のpdf版をダウンロードしてお使いください。
「女性・戦争・人権」学会 書評会開催のお知らせ
(共催:立命館大学国際言語文化研究所ジェンダー研究会)
2024年1月に出版された、本学会会員の岡野八代さんの著書の書評会を開催いたします。会員・非会員問わず、奮ってご参加ください。
登壇者:著者 岡野八代さん(同志社大学)
評者 江原由美子さん(東京都立大学 名誉教授)
堀田義太郎さん(東京理科大学)
日時 :2024年5月12日(日)14:00〜17:00
場所 :立命館大学朱雀キャンパス 217教室
オンライン有(最小限の機材で実施)
参加費/申込:不要
※会場アクセス
JR「二条駅」または京都市営地下鉄「二条駅」下車、徒歩約2分
阪急「大宮駅」下車、徒歩約10分
https://www.ritsumei.ac.jp/accessmap/suzaku/
※Zoomで参加される方は、時間になりましたら下記のURLよりアクセスしてください。
https://us02web.zoom.us/j/83020499910?pwd=bDNmRGFoQVBaSTlKd0VGUTJmMUhxZz09
ミーティング ID: 830 2049 9910
パスコード: 847140
・Zoomご利用が初めての方は事前にダウンロード&接続テストをお願いします。
・書評会中は質疑応答の時間を除き、マイクをミュートしてご参加ください。
そのほか、問い合わせや物販の設置の相談については、学会のメールまでご連絡ください。
パレスチナ市民に対する攻撃の即時停止を求める声明
10月7日のハマスの襲撃の後、イスラエルは報復として、ガザに対し無差別爆撃を続け、大規模な地上侵攻を準備しています。10月29日現在、すでに8000名を超えるガザの市民、とりわけ多くの子どもたちが殺傷される深刻な被害を生み出しています。
このような暴力の激化と人道的危機の深刻化を深く憂慮し、国際人道法に則って、人権、人道にかかわる国際的規範が遵守されることを求めます。「自衛権」の行使の名の下で市民、とりわけ子どもたちを無差別に殺し傷つけることをイスラエルは正当化することはできません。私たちは、即時停戦、人質の解放、ガザに対する軍事封鎖の解除、電気・水の供給、食糧・医薬品等の搬入の保証を求めます。
元々、パレスチナは、多様な民族の、宗教も異なる人々が共存していた地域です。第二次世界大戦後、イスラエルの建国によって、多くのパレスチナ人がその地から追われ難民となっている状態が現在も続いています。多くが難民であるガザの人々は、フェンスや壁に囲まれた逃げ場のない狭い地域に押し込まれ、度重なる空爆によって苦しんできました。ガザが世界一の「天井のない監獄」と言われる状況にあることは広く知られています。軍事封鎖により発展の権利を侵害され、経済的に立ち行かないため、人々は失業と貧困を強いられています。
ガザと東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区の双方において、パレスチナ人は、ジェノサイドと言うべき殺戮から解放され、安全に暮らす権利が保障されなければなりません。被占領地の住民の保護、占領地への入植の禁止等を定めた国際人道法の遵守と共に、パレスチナにおける長年にわたるイスラエルの占領と軍事封鎖の歴史的検証が必要です。
私たち「女性・戦争・人権」学会は、設立当初より、日本軍「慰安婦」問題=日本軍性奴隷制問題を学術的に研究してきました。日本政府に対しては、日本軍「慰安婦」問題の法的責任を認め、過去の日本が国家として行った犯罪について、歴史的な検証を経て、その問題と責任の所在を明らかにするよう求めてきました。戦争や軍事化による性暴力の被害を受けてきた女性の尊厳の回復を求め、国際社会における人権規範の深化に寄与する研究を行う学会としては、中東における現在の紛争も、その根本原因である歴史的文脈を明らかにし、軍事力に依るのではなく、人権の国際規範に基づいた平和的手段による解決を求めます。
2023年10月30日 「女性・戦争・人権」学会
2023年度年次大会のお知らせ
2023年度年次大会は、対面で筑波大学にて開催致します(※会員の方は、オンラインでも参加可能です。
詳しくはNL「大会案内号」をご確認ください。)。
日時
2023年10月22日(日)10:00~17:30
会場
筑波大学筑波キャンパス 第一エリア1C210教室
(つくばエクスプレス「つくば」駅隣接の「つくばセンター」からバス)
参加費
会員:無料、一般:1000円、学生・正規雇用以外:500円
スケジュール
10:00~11:00 自由論題
「フェミニズム政治理論の観点から考える沖縄の不正義とその是正」
報告者 山岸大樹さん(同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士課程後期)
討論者 親川裕子さん(琉球大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程)
11:00~12:00 総会
12:00~13:00 ランチ休憩
13:00~17:00 シンポジウム
「戦争と女性――女性にとって真の安全とはなにか?」
パネリスト 三牧聖子さん (同志社大学)
高良沙哉さん (沖縄大学)
清末愛砂さん (室蘭工業大学)
討論者 秋林こずえさん (同志社大学)
科研費基盤研究B「フェミニズム理論による新たな国家論の構築-ケア概念と安全保障概念の再構想から」 (課題番号 23H03654)共催
≪筑波大学筑波キャンパスへのアクセス≫は以下のURLから。
https://www.tsukuba.ac.jp/access/tsukuba-access/index.html
つくばエクスプレス(TX)「つくば」駅:近接の「つくばセンター」からバス(6番乗り場で「筑波大学循環(右回り/左回り)」15-20分)
JR土浦駅:西口3乗り場から「つくばセンター」行バスで30分、「つくばセンター」で乗り換え、または西口からタクシーで15-20分
JR荒川沖駅:西口4乗り場から「つくばセンター」行バスで30分、「つくばセンター」で乗り換え、または西口からタクシーで20-25分
いずれも、「大学公園」駅(会場までに階段有り)または「松美池」駅(会場までに階段無し、坂道有り)で降車してください。
シンポジウム趣意書
「戦争と女性――女性にとって真の安全とはなにか?」
本学会は、1997年に日本軍「慰安婦」問題の解決をめざして設立されて以来、戦争をめぐる多様なテーマをジェンダーの視点から論じてきました。しかしながら、日本軍「慰安婦」問題が解決されるどころか、2022年12月に閣議決定された安保三文書に象徴されるように、岸田政権は、植民地主義に基づく侵略戦争に対する反省もないまま、米軍と一体化した戦争遂行も辞さない体制づくりを臆面なく始めるようになりました。ウクライナ戦争を奇貨として、台湾有事を煽り続ける政治状況に対して、2023年度のシンポジウムでは本学会の本旨ともいえる「戦争と女性」をテーマに、こうした状況においてわたしたちが論じるべき政治的課題についてみなで考える機会にしたいと思います。
戦争をめぐって女性たちは、戦争遂行の主体ではなくむしろ、戦争の客体、つまり被害者の立場から長く批判してきました。他方で、そうした被害者のみからの視点を批判し、女性たちもまた戦争に加担してきた歴史もすでに詳らかにされています。女性を平和に結びつけて論じる議論は、本質主義として批判される傾向もありますが、本シンポジウムでは、政治社会において女性たちが置かれてきた立場から安全とはなにかを問い直すことによって、戦争に前のめりになる政治や、あるいは武力による安全保障を国家の存在意義とみなすような考え方を批判的に考察したいと思います。
以上の問題関心から、本シンポジウムでは、1. 安全保障概念をジェンダー視点から問い、2.沖縄の状況と女性たちの生活安全保障と、3. 女性たちによる平和運動を論じることで、女性(あるいは、社会的に周辺化された人びと)にとって必要な、真の安全とはなにかを探求します。
2022年度年次大会のお知らせ
2022年度年次大会は、対面で開催致します。
日時
2022年10月23日(日)
10:00〜17:30
会場
同志社大学烏丸キャンパス 志高館 SK119(地下鉄「今出川駅」1番出口より北に徒歩5分)
参加費
会員:無料、一般:1000円、学生・正規雇用以外:500円
スケジュール
10:00~11:00 自由論題
「日本軍「慰安婦」問題をめぐる日韓知識人による否認(denial)の政治学」
報告者 坂本知壽子さん(大韓民国延世大学社会発展研究所、大阪公立大学都市科学・防災研究センター)
討論者 堀田義太郎さん(東京理科大学)
11:00~12:00 総会
12:00~13:30 ランチ休憩
13:30~17:30 シンポジウム
「日本軍「慰安婦」問題をどう教えるか・どう学ぶか?――歴史/国家/国際社会」
パネリスト 加藤圭木さん(一橋大学)
平井美津子さん(立命館大学)
艮(うしとら)香織さん(宇都宮大学)
討論者 高良沙哉さん(沖縄大学)
シンポジウム趣意書
1997年に日本軍「慰安婦」問題の解決を目指し設立された本学会も25周年を迎えます。戦時における女性に対する(性)暴力への国際社会での意識の向上とは反対に、日本社会における認識は、日本軍「慰安婦」制度をめぐる歴史の歪曲・否認を通じて、退行を続けています。
そもそも日本軍「慰安婦」制度(日本軍性奴隷制度)は、戦後の歴史叙述の中でほとんど語られることはありませんでした。しかし1990年代、金学順さんら被害女性が次々と自己の被害を語ったことをきっかけに歴史研究が進み、日本軍「慰安婦」制度の実態が明らかになり、深刻なジェンダー差別・民族差別に根付いた日本の帝国主義的侵略戦争遂行に不可欠なものとして、この残虐な制度が遂行されたことがわかっています。こうしてようやく明らかにされてきた史実の隠蔽を図る歴史教育へのあからさまな政治家介入は言語道断であり、歴史を見つめ、その反省の上に社会を改善していくという未来に対する冒涜ともいえる行為に他なりません。市民の批判精神を涵養する教育への政治介入は、わたしたち一人一人の自由な想像力に対しても、看過しえない制約を課す暴力といってもよいでしょう。こうした状況は、国際社会に日本国憲法が伝えている、平和を希求し、その実現にむけて国際社会に協力するという約束を反故にすることにもつながっています。
こうした状況を背景に、学会設立25周年記念として、「日本軍「慰安婦」問題をどう教えるか・どう学ぶか?」をテーマに、日本における学校教育のあるべき姿や現在の問題点、また学生に限らず市民が歴史を学び・学びなおすことの大切さ、学ぶ場をどう創造していくかなど、多角的な視点から市民にとっての「歴史」の意義をみなで考えるシンポジウムを開催します。
パネリストとして、朝鮮近代史を専門として大学教育の中でゼミ生たちと日韓・日朝問題を考察されてきた加藤圭木さん、中学校の社会科教育において、日本軍「慰安婦」問題を含めた過去の日本社会・国家の姿を未来に向けて伝えていく実践を重ねると同時に、自由な教育実践を政治介入により妨げられるという経験をされてきた平井美津子さん、性教育・人権教育の一環として日本軍「慰安婦」問題を現代的な視点から学ぶ意義を考えてこられた艮香織さんに登壇頂きます。
シンポジウムに多くの方が参加して頂き、未来に向けて日本軍「慰安婦」問題をどう学んでいくのか、皆さんの経験にも触れるような大会を目指します。多くの被害者の方々がお亡くなりになられた今、私たちがなすべきことは何かを考える機会にしたいと思っています。
ロシア軍のウクライナへの侵攻に対する抗議声明
2022 年 2 月 24 日に開始されたロシア軍のウクライナへの侵攻は、即時停止を求める国際世論の高まりにもかかわらず、現在も続き、子どもたちを含む一般市民を巻き込み、深刻な被害を生み出しています。
第二次世界大戦の膨大な犠牲を経験した国際社会は、戦後、国際連合を設立しましたが、冷戦構造下、米ソの対立のもと、世界各地で武力紛争が引き起こされ、戦禍がやむことはありませんでした。戦争の世紀といわれた20世紀末、ソ連の崩壊により、冷戦は終わったといわれながらも、未だに、核保有国の大国のパワーの枠組みは支配的なまま、軍事同盟や軍拡競争が強化され、軍事的な介入の脅威はなくなっていません。しかし、どのような状況であれ、今回のロシア軍のウクライナ侵攻は、武力行使及び武力による威嚇の禁止を明記している国連憲章、国際法の基本原則に反した侵略行為であり、第二次世界大戦以降、国境を越えた世界の市民運動による平和構築に向けた不断の努力を踏みにじるものです。
かつて日本も、富国強兵を目指し、アジア各地を侵略し、傀儡国家「満州国」を作り、国際連盟を脱退し、第二次世界大戦へと突入していった歴史があります。しかし、多大な犠牲を払って得た戦争放棄という理念に基づく憲法を有する日本の戦後社会において、このウクライナ危機に乗じて、憲法 9 条を廃止し、核には核をという核兵器共有や使用を辞さないとする一部の政治家たちの主張や動きがあることを見逃すことはできません。
私たち「女性・戦争・人権」学会は、設立当初より、日本軍「慰安婦」問題=日本軍性奴隷制問題を学術的に研究してきました。日本政府に対しては、日本軍「慰安婦」問題の法的責任を認め、過去の日本が国家として行った犯罪について、歴史的な検証を経て、その問題と責任の所在を明らかにするよう求めてきました。戦争や軍事化による性暴力の被害を受けてきた女性の尊厳の回復を求め、社会における人権規範の深化に寄与する研究を行う学会としては、今回のロシアによるウクライナ軍事侵攻に対し、ロシア軍が即時に、無条件に、完全にウクライナから撤退することを要求します。同時に、全ての関係国に対して、平和的手段による解決に徹することを切望します。そして、反戦、平和の声をあげるウクライナ、ロシア、さらには世界中のあらゆる人々と連帯することを表明します。
2022年3月23日 「女性・戦争・人権」学会
2021年度年次大会のお知らせ
2021年度年次大会は、オンライン(Zoom)で開催致します。
日時
2020年10月24日(日)
11:00〜17:00
参加費
会員:無料、一般:1000円、学生・正規雇用以外:500円
スケジュール
11時~12時 自由論題
12時〜13時 ランチ休憩
13時~13時45分 総会
14時~17時 シンポジウム
自由論題
「反戦運動を顕彰する ――長谷川テル記念碑建設運動をめぐって」
報告者 西田千津さん(中国近現代史)
討論者 秋林こずえさん(同志社大学)
シンポジウム
「30年、証言の政治を振り返る――私たちが継承するもの」
パネリスト:鈴木隆史さん(桃山学院大学)
宜野座綾乃さん (琉球大学)
司会:倉橋耕平さん(創価大学)
※下記にシンポジウム趣意書(pdf)を添付してあります。ダウンロードして閲覧可能です。
事務局よりお願い
・会員:10月19日までに事務局まで「会員」と明記した上でメールまたは、グーグルフォームでお知らせ下
さい。
・非会員:メールまたは、グーグルフォームよりお申込みください。メールの場合、お名前・ご住所をご記入ください。お申し込みの上、10月16日までに参加費を振り込んでください。確認後参加について詳細をお伝えします。なお、定員がございますので、非会員の方はお断りする場合ああります。
※会員・非会員共通 申し込み
メールアドレス:joseijinkensensou@gmail.com
グーグルフォーム: https://forms.gle/oiyW69enqVCeoYvc7
(QRコードからもアクセスできます。ポスターをクリックしてください。画像が拡大します)
・Zoomを使用します。Zoomご利用が初めての方は事前にダウンロード&接続テストをお願いします。
・Zoomで使用されるアカウントのお名前が名簿と異なる場合は、その旨もお知らせ下さい。(なるべく会員名簿にあるお名前が表示されるようにして下さいますようお願い致します。)本学会の会員であることが確認できない場合はご参加を許可しないことがあります。
・総会とシンポジウムの録音や録画は厳にお控え下さい。
2020年度年次大会のお知らせ
2020年度年次大会は、オンライン(Zoom)で開催致します。
日時
2020年10月25日(日)
14:00〜17:00
参加費
会員:無料、一般:1000円、学生・正規雇用以外:500円
スケジュール
13時~13時45分 総会
14時~17時 シンポジウム
シンポジウム
「日本軍性奴隷制の原点-女性国際戦犯法廷20周年」
パネリスト
方清子さん(日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク)
東澤靖さん(弁護士・明治学院大学)
土野瑞穂さん(明星大学)
※下記にシンポジウム趣意書(pdf)を添付してあります。ダウンロードして閲覧可能です。
事務局よりお願い
・総会、シンポジウムに参加される場合は10月18日までに事務局まで会員と明記した上でメールでお知らせ下さい。
・非会員の申し込みは、事務局にメールにて、お名前・ご住所を連絡いただき、10月15日までに参加費を振り込んでください。確認後参加について詳細をお伝えします。なお、定員がございますので、非会員の方はお断りする場合ああります。
・メールアドレスは、joseijinkensensou@gmail.comです。
・Zoomを使用します。Zoomご利用が初めての方は事前にダウンロード&接続テストをお願いします。
・Zoomで使用されるアカウントのお名前が名簿と異なる場合は、その旨もお知らせ下さい。(なるべく会員名簿にあるお名前が表示されるようにして下さいますようお願い致します。)本学会の会員であることが確認できない場合はご参加を許可しないことがあります。
・総会とシンポジウムの録音や録画は厳にお控え下さい。
鈴木彩加『女性たちの保守運動』(人文書院、2019年)オンライン書評会
本オンライン書評会の募集は締め切りました。
日時・場所 2020年8月21日(金)
13:00-16:00
オンライン開催 参加費無料
著者:鈴木彩加
評者:斉藤正美・能川元一
司会:倉橋耕平
主催:「女性・戦争・人権」学会
下記のURLより参加をお申込みください。
https://forms.gle/ggPBTyoXp1kLcR7W7
折り返し、ご参加に必要な情報を送付いたします。
なお、キャパシティの問題で、先着80名様に限定させていただき、定員に達した段階で締め切らせていただきます。
共有させていただくアクセス情報は参加の上限がありますので、他の方に拡散するなどせず、申込者のみ使用してください。
Zoomご利用が初めての方は事前に接続テストをお願いします。
ご発言の際には、お名前をおっしゃってから発言をお願いします。
いかなる録音、録画もお控えください。
Zoomでは事前登録に使ったお名前でご参加ください。
セキュリティのため待機室で事前登録のお名前と確認させていただくためです。
名前が異なるとお待たせする場合があります。
許可のない場合のチャット機能のご利用はお控えください。
ご発言の際以外はミュートでお願いします(基本的にホスト操作でミュートいたします)。
質疑応答で挙手される際は、参加者タブの「挙手機能」をご利用ください。
当学会としましては、初めてのオンラインセミナーの試みであり、至らない点も多々あるかと思いますが、ご理解をいただければまことに幸いです。
「女性・戦争・人権」学会 ニューズレター第 43号を発行しました。
※ニューズレターにはパスワードがかかっています。
会員へのパスワードの通知は、学会誌の送付と共に行います。
目次
巻頭言
事務局より
事務局報告/学会誌編集委員会報告/会計報告
2019 年度年次大会の報告
シンポジウム報告
2020年度大会お知らせ
会員著作紹介
編集後記
「女性・戦争・人権」学会2019年度大会
日時:2019年10月27日(日)10:00~
会場:同志社大学 烏丸キャンパス 志高館1階
(参加費 会員:無料、一般:1,000円、学生/正規労働者以外:500円)
○スケジュール
10:00~11:00 自由論題
「戦時性暴力を裁く――国際刑事裁判所における裁判動向」
報告者 前田朗さん(東京造形大学)
討論者 秋林こずえさん(同志社大学)
11:30~12:30 総会
12:30~13:30 ランチ休憩
13:30~17:30 シンポジウム
「学問の自由と政治――フェミニズム・バッシングの歴史と現在」
パネリスト
能川元一さん(神戸学院大学)
牟田和恵さん(大阪大学)
矢野久美子さん(フェリス女学院大学)
討論者 倉橋耕平さん(立命館大学)
18:00~20:00 懇親会 会場未定
(懇親会費 会員/一般:5.000円-、
学生/正規労働者以外 2,000円-)
あいちトリエンナーレ企画展「表現の不自由展・その後」展示中止に対する抗議声明
「あいちトリエンナーレ2019」は8月1日に開催されたばかりですが、その企画展「表現の不自由展・その後」が3日夕べには中止されることが発表されました。
私たち「女性・戦争・人権」学会は、設立当初より、日本軍「慰安婦」問題=日本軍性奴隷制問題を学術的に研究してきました。私たちは、今回のあいちトリエンナーレにおける「表現の不自由・その後」展の開催中止の発端となった、「平和の少女像」展示に対する河村たかし名古屋市長の政治介入および菅義偉官房長官による補助金交付の見直しへの言及に象徴される日本政府の圧力に対して強く抗議するとともに、「表現の不自由展・その後」の再開、そしてあいちトリエンナーレの円滑な運営を求めます。
今回の企画展「表現の不自由展・その後」は、これまで日本の公立美術館やギャラリーで展示を拒否された芸術作品を、その経緯の解説とともに展示するものでした。日本軍「慰安婦」問題、天皇と戦争、植民地支配、憲法9条、政権批判など、公共の文化施設でタブー視されがちなテーマを表現する作品が排除されてきた状況について、作品を実際に観て自由に考える機会を得ることができる画期的な企画です。
特に「少女像」として多くのメディアが言及する「平和の少女」像は、そもそも、1991 年に金学順(キム・ハクスン)さんが世界で初めて、民間業者が戦場を連れまわしただけとして無責任に問題を放置してきた日本の政治家たちの妄言に抗議するため、日本軍性奴隷制の被害者として名乗りを上げ、その告発に励まされ立ち上がった多くの女性たちの運動に敬意を表するために制作されました。
日本軍性奴隷制の被害者は様々な被害を経験してきました。なかでも当時、日本の植民地であった朝鮮半島では多くの女性が「慰安婦」とされました。彼女たちは東南アジアや南太平洋にまで広がる戦地に移送され、慰安所で壮絶な体験をし、その後も故郷に帰れなかったり、命を落としたりしました。その深刻な被害は元「慰安婦」の方々の多くの証言や、それらの地道な聞き取りや研究によって明らかにされてきました。
韓国では金学順さんの告発後、1992 年から毎週、ソウルの日本大使館前で「水曜デモ」が開催され、加害の責任、とりわけ戦時の人権侵害に対する法的責任をとり、歴史教育が行なわれるようにという日本政府への訴えが続けられています。「平和の少女像」(作家の命名)である「平和の碑」は、挺身隊問題対策協議会の提案で「水曜デモ」1000回を記念して2011年12月に建立されました。日本政府に法的責任を求め、二度と同様の戦時性暴力による女性の人権侵害が生じないよう平和を希求する女性たちを記念したものです。そうした市民の活動に対して、日本政府は像を建立しないように韓国政府にさまざまな圧力をかけたといわれています。また建立後は韓国政府に撤去を求め、あるいは韓国以外での「平和の少女像」の建立に対しても圧力をかけています。
今回、「平和の少女像」の展示が始まった当初より、多くの嫌がらせの電話があったと報道されています。こうした「平和の少女像」への無理解と敵意は、当時の日本軍、内務省を中心に設置、運営された性奴隷制度の存在そのものを否定し、過去に誠実に向き合うことを誓った 1993 年の河野談話をなきものにしようというものです。その背景には、戦時性暴力の根絶を目指す国際社会の努力に背を向ける政治家の発言と日本政府の態度があります。
私たちは、今回の暴力を示唆する脅迫行為を非難するとともに、「平和の少女像」の展示に対する政治的圧力に強く抗議し、河村たかし名古屋市長と菅義偉官房長官の発言撤回を求めます。そして「表現の不自由展・その後」が再開され、あいちトリエンナーレが円滑に運営されることを求めます。
「女性・戦争・人権」学会
2019年8月5日
「女性・戦争・人権」学会2018年度大会
日時:2018年10月28日(日)10:00~
会場:同志社大学 烏丸キャンパス 志高館1階
(参加費 会員:無料、一般:1,000円、学生/正規労働者以外:500円)
○スケジュール
10:00~11:00 自由論題
「1990年代戦後責任論争の批判的再検討――ポストコロニアリズムの観点から」
報告者 大畑 凜(大阪府立大学)、白 始真(立命館大学)
11:30~12:30 総会
12:30~13:30 ランチ休憩
13:30~17:30 シンポジウム「性暴力研究の現在――国際・国家・社会」
パネリスト
森川 恭剛さん(琉球大学)
皇甫 康子さん(「在日」女性の集まり「ミリネ」代表)
秋林 こずえさん(同志社大学)
討論者 山下 明子さん(奈良大学)
18:00~20:00 懇親会 会場未定
(懇親会費 会員/一般:5.000円-、
学生/正規労働者以外 2,000円-)
「女性・戦争・人権」学会
ニューズレター大会案内号
日時:2018年10月28日(日)10:00~
会場:同志社大学 烏丸キャンパス 志高館1階
(参加費 会員:無料、一般:1,000円、学生/正規労働者以外:500円)
○スケジュール
10:00~11:00 自由論題
「1990年代戦後責任論争の批判的再検討――ポストコロニアリズムの観点から」
報告者 大畑 凜(大阪府立大学)、白 始真(立命館大学)
11:30~12:30 総会
12:30~13:30 ランチ休憩
13:30~17:30 シンポジウム「性暴力研究の現在――国際・国家・社会」
パネリスト 森川 恭剛さん(琉球大学)
皇甫 康子さん(「在日」女性の集まり「ミリネ」代表)
秋林 こずえさん(同志社大学)
討論者 山下 明子さん(奈良大学)
18:00~20:00 懇親会 会場未定
(懇親会費 会員/一般:5.000円-、学生/正規労働者以外 2,000円-)
シリーズ「グローバル・ジャスティス」
第60回人道主義と平和構築―韓国NGOによる南北交流と協力―
日時:2018年5月15日(火)18:30~20:00
会場: 同志社大学烏丸キャンパス志高館 SK119教室
講演:イ・イェジョン氏
(Korean Sharing Movement(わが民族助け合い運動)우리민족서로돕기운동、政策部長)
韓日逐次通訳付き
Korean Sharing Movement(KSM、わが民族助け合い運動)は、1996年の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)での食糧危機が国際社会での問題となったことを契機に、市民団体や宗教団体によって始められた韓国のNGOである。以降、北朝鮮への災害支援や農業開発、公衆衛生開発を通した人道援助を行いながら、南北交流と協力を推進し、朝鮮半島での平和構築と和解を目指してきた。
イ・イェジョン氏は2003年からKSMで活動し、現在、政策部部長を務めている。本講演会では、南北会談や米朝会談によって南北融和や朝鮮半島の非核化をめぐる情勢に大きな変化が起こっている今、韓国NGOによる北朝鮮への人道支援活動を振り返り、その達成や限界、また今後の活動の展望について報告を頂く。
講演者プロフィール:延世大学で国際関係学修士号を取得。2003年からKSMで活動し、南北交流、
北朝鮮への医療支援などのプロジェクト担当を経て、現職。2009年からはKSMなどのNGOと京義道による北朝鮮へ支援活動を議論する国際会議事務局も担当。
主催:同志社大学グローバル・スタディーズ研究科
≪合評会のお知らせ≫
『歴史修正主義とサブカルチャー 90年代保守言説のメディア文化』(倉橋耕平著、2018年、青弓社)合評会を開催いたします。
日時:5月12日(土)、14-17時
場所:同志社大学烏丸キャンパス志高館SK289
評者:板垣竜太さん(同志社大学社会学部教授)、鈴木彩加さん(大阪大学大学院 人間科学研究科 社会環境学講座 助教)
※諸事情により、評者が鈴木さんから、堀あきこさん(大阪電気通信大学ほか非常勤講師)に変更となりました。ご了承ください。
事前申し込み不要。無料。
終了後に懇親会を予定しております。
印刷用チラシは下記のPDFファイルをダウンロードしてください。
日時:2018年1月10日(水) 18:30 - 20:30
会場: 同志社大学烏丸キャンパス 志高館 SK112
講演: 川 恵実 氏 (NHK 名古屋放送局 制作部 ディレクター)
「戦前、岐阜県の山間地から、旧満州(中国東北部)・陶頼昭に入植した650人の黒川開拓団。終戦直後、現地の住民からの襲撃に遭い、集団自決寸前まで追い込まれた。その時、開拓団が頼ったのは、侵攻してきたソビエト兵。彼らに護衛してもらうかわりに、15人の未婚女性がソ連兵らを接待した。戦後70年が過ぎ、打ち明けることがためらわれてきた事実を公表した当事者たち。その重い事実を残された人々はどう受け止めるのか。」(NHK・ETV特集ウェブサイトより)
本番組は放映と同時に大きな話題となった。アジア太平洋戦争終結後の引き揚げにおける性暴力に関してはまだ資料や研究も少ないが、体験者は高齢化し、証言を得られる機会は今後、ますます少なくなるであろうことは想像に難くない。本企画では、貴重な証言を記録し、番組の制作にあたった川恵実ディレクターから、どのような経緯で取材を行ったのか、番組で何を語ろうとしたのか、あるいは語りきれなかったことは何か、などについてお話し頂き、参加者との議論を試みたい。
番組上映と講演
18時30分~ NHK・ETV特集『告白―満蒙開拓団の女たち』(2017年8月5日放映) 上映 (60分)
19時30分~ 川恵実氏トークと質疑応答 (60分)
講演者プロフィール:
2012年同志社大学社会学部卒業後、映像制作会社 テレビマンユニオン参加、
NHK『サラ メシ』ADなどを経て、2014年『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)でディレクターに。2015年よりNHKに転職(岐阜放送局)、2017年8月より名古屋放送局制作部。主な番組に『NEXT未来のために「命の交差点に立つ―ある救急医の闘い」』(2016年「地方の時代」優秀賞、「中部テレビ大賞」奨励賞)、『NEXT 未来のために「縫えないほころび―外国人技能実習生とアパレルの街」』(2017年「中部テレビ大賞」大賞)。本番組は文化庁芸術祭参加、NHK編成局長特賞。
主催:同志社大学グローバル・スタディーズ研究科
Tel.075-251-3930 E-mail: ji-gs@mail.doshisha.ac.jp
後援:フェミニスト・ジェンダー・セクシュアリティ研究センター
「女性・戦争・人権」学会
サンフランシスコ市「慰安婦」記念碑に対する吉村洋文大阪市長・安倍晋三首相の抗議の撤回を求める声明
2017年12月4日
2015年9月、サンフランシスコ市議会は全会一致で「慰安婦」記念碑建立を可決し、その決議に則り2017年9月に記念碑が完成しました。このサンフランシスコ市議会の決定に抗議する、として、吉村洋文大阪市長はエドウィン・リーサンフランシスコ市長に対して、「慰安婦」記念碑の設置中止を要求しました。さらに、市民の手で記念碑が発表された後には、市長の拒否権の発動を要求しました。そして2017年11月22日にリー市長が記念碑の公有化を認めたことを受けて、吉村市長は11月24日、12月には大阪市とサンフランシスコ市との姉妹都市関係を解消することになると表明しました。
吉村市長は、姉妹都市解消の理由として、記念像の碑文が「日本政府の見解と異なる」ことを挙げ、安倍晋三首相もまた吉村市長と同様の趣旨で、サンフランシスコ市の「慰安婦」記念碑公有化に反対する旨の申し入れを行いました。
「慰安婦」を記念する最も有名な像である「平和の少女像」は2011年12月に、日本軍「慰安婦」制度の被害女性たちの抗議活動である「水曜日デモ」1000回記念にソウルの日本大使館前に建立されました。以降、世界各地で日本軍「慰安婦」を記念する碑が建立されています。その背景には、日本政府が日本軍「慰安婦」問題をいまだに否定し続ける態度があると私たちは考えます。とりわけ2006年の発足以降、いわゆる狭義の「強制連行を直接示すような記述は見当たらない」とした2007年の閣議決定に象徴されるように、安倍内閣は日本軍「慰安婦」問題に真摯に向き合うどころか、性奴隷制度である日本軍「慰安婦」制度が存在しなかったかのような世論形成に力を注いできたといっても過言ではありません。
日本軍「慰安婦」問題は、いまや世界的な国際人権の課題として認識されています。サンフランシスコ市に公有化された「慰安婦」記念碑はそのような普遍的な女性の人権の問題を記憶するためにサンフランシスコ市民が建立したものです。その「慰安婦」記念碑に抗議した吉村大阪市長ならびに安倍首相に、以下の理由から、抗議を撤回し、むしろ積極的に被害女性たちの主張に耳を傾けて、日本軍「慰安婦」問題の解決に尽力することを強く求めます。
・1991年の金学順(キム・ハクスン)さんの初めての告発は、強かん・性奴隷・強制性売買などが「人道に対する罪」に当たる戦争犯罪として認識される契機ともなり、グローバルな国際人権レジームを動かすほどの勇気ある告発でした。その後、国際社会では市民が中心となった資料発掘や聞き取りなどにより「慰安婦」制度についての研究が進められています。2007年の安倍内閣の閣議決定は1993年の「河野談話」以前に日本政府が発見した資料にしか言及しておらず、その後の研究で得た知見、そして何よりも国際的な人権法の趨勢に著しく逆行しています。
・2014年に国連自由権規約委員会は、日本政府が、本人の意に反して慰安所の募集や移送が行われていたことを認めながら、強制的に連行されたのではなかったと主張する点で矛盾していると指摘しています。さらに、吉村市長や安倍首相が言うような日本政府の見解・立場について同委員会は、法的責任を伴う人権侵害とみなすに十分である「慰安婦」問題に対する曖昧な態度であり、「慰安婦」にされたと勇気をもって告発した女性たちが再度傷つけられることへの懸念を表明しています。吉村市長ならびに安倍首相は、公人としての発言・行動が被害女性たちの尊厳を再度、踏みにじっていることを認識するべきです。
・吉村市長の行動は、かつての橋下徹大阪市長(当時)による「慰安婦」制度と現代の軍隊による性暴力を容認する発言を想起させます。吉村市長は、「強制連行はなかった」、戦時下に「慰安婦制度が必要なのは誰だって分かる」などの妄言を繰り返してきた橋下前市長の発言に追随した態度を示し続けていますが、吉村市長は、女性の人権や尊厳、性暴力に対する理解を深め、市民の相互理解を通じた世界平和への寄与を目的とする姉妹都市の精神に基づいた行動をとるべきです。
・サンフランシスコ市の「慰安婦」記念碑は、性暴力のサバイバー女性たちの強さと勇気を記憶するために、「慰安婦」とされた中国・韓国・フィリピンの女性たちが長い沈黙を破って立ち上がる姿を象徴しています。また、彼女たちを見つめる地上の女性像のモデルは、日本政府に法的責任を認めるよう公に求めた最初の女性である金学順さんです。被害女性たちの告発の声は、日本政府の責任を問い、正義の回復を求めているのです。それは、二度と同じ過ちを繰り返さない、そしてこれ以上、性暴力の被害にあった女性たちに沈黙を強いることのない未来を求める声です。吉村市長と安倍首相は、彼女たちの声をいたずらに日本非難の声と歪めることなく、真摯に受け止めるべきです。
・「女性・戦争・人権」学会は、2015年12月28日に突然発表された「日韓合意」に対して強い危惧を表明してきました。なぜなら、この合意をめぐる日本政府のこれまでの態度は、「歴史から日本軍性奴隷制度という過去を消し去ろうとする意図が働いているのでは」と疑わせるに十分だったからです。そして現在、韓国の「平和の少女」像やサンフランシスコ市を始めとした世界の「慰安婦」記念碑をめぐる安倍首相の発言を見れば、残念ながら、私たちの危惧が正しかったことは明らかです。
吉村市長が碑文の中でことさら問題視する被害者数は、政府による十分な調査が行われず、また戦後公文書が政府の手で大量に焼却されてしまったという状況のもとで、たしかに研究者の間でも複数の説が存在しています。しかしながら、これまでの調査・研究により明らかになった、揺るがしがたい事実とは、「慰安所」が日本軍によって、設置・運営・管理されていたという事実です。日本軍「慰安婦」制度が女性の人権と尊厳を踏みにじる性奴隷制度であったという最も重要な点から目を逸らす態度は、被害者女性たちの人権を再び貶める態度に他ならず、改められなければなりません。
以上より、わたしたち「女性・戦争・人権」学会は、吉村大阪市長、安倍首相に対して、サンフランシスコ市の「慰安婦」記念碑の公有化への抗議を撤回することを求めます。
*なお、本声明に関係するこれまでの学会声明は、以下の通りです。
「「河野談話」を再認識することで堅持し、「慰安婦」問題の真の解決を!」(2012年9月7日)
「日本軍「慰安婦」問題の日韓合意に深刻な危惧を表明します」(2016年1月12日)
≪「女性・戦争・人権」学会 2017年度年次大会のお知らせ≫
「「安全保障」と管理される性:韓国「基地村女性」の闘い」
日時:2017年10月22日(日)11:00~
会場:同志社大学 烏丸キャンパス 志高館SK119
(参加費 会員:無料、一般:1,000円、学生/正規労働者以外:500円)http://www.doshisha.ac.jp/information/campus/access/karasuma.html
○スケジュール
11:00~12:00 総会
12:00~13:30 ランチ休憩
13:30~17:30 シンポジウム
18:00~20:00 懇親会 会場未定
(懇親会費 会員/一般:5.000円-、学生/正規労働者以外 2,000円)
2017年度シンポジウム
「「安全保障」と管理される性:韓国「基地村女性」の闘い」
パネリスト
アンギム・ジョンエさん(平和をつくる女性の会)
イ・ナヨンさん(中央大学)
討論
山下英愛さん(文教大学)
※日・韓逐次通訳つき
敗戦後の日本が、米国を中心とする占領政策によって戦争責任を不問にしたまま復興していく一方で、朝鮮半島では、日本による植民地支配からの「解放」もなく、東西冷戦が朝鮮戦争という実際の戦争として戦われました。この戦争はまた、朝鮮半島の南北それぞれを米国と他の西側諸国による国連軍、ソ連と中国が支援した戦争でした。1950年から始まったこの朝鮮戦争は、1953年に朝鮮民主主義人民共和国、中国、国連軍による休戦協定が締結されたきり、和平に向けた交渉は行われていません。
このような「戦争」状態は軍事力による安全保障政策を正当化し、休戦協定締結後も韓国には米軍の駐留が継続しています。その米軍駐留を支えるために米軍基地周辺の「基地村」と呼ばれる繁華街では性売買が制度化され、現在でも続いています。
在韓米軍をめぐる韓米政府の交渉において、「基地村」は外交カードとして使われたことが明らかになっています。1969年のニクソン・ドクトリンにおいて米国政府が在韓米軍の削減を提示した際に、朴正煕大統領(当時)は「基地村浄化」政策を打ち出し、より「安全」な性売買の提供を約束することによって在韓米軍の引き留めを図りました。この政策によって基地村女性たちに対する性病検査の徹底と治療が行われました。女性たちは、韓国社会で「淪落女性」として蔑視の対象となりながら、米軍駐留のための「民間大使」とも呼ばれ、外貨獲得の手段としてもてはやされました。
2014年6月25日、「基地村女性」122人が韓国政府に対して一人当たり1000万ウォン(約100万円)の国家賠償を求める裁判、「韓国内基地村米軍慰安婦国家損害賠償訴訟」を起こしました。原告は1960~70年代に基地村で性売買に携わった韓国人の基地村女性たちです。
裁判では基地村設置に対する韓国政府の責任、基地村女性たちへの補償、性病検査の違法性などが問われました。
2017年1月20日に言い渡された一審の判決でソウル地方裁判所は、女性たちの訴えを一部認め、1977年の性病感染人隔離収容に関する法制定より前に、本人の同意なく性病検査と治療のために施設に隔離されたことは違法と認め、57人に500万ウォン(約49万円)の支払いを命じました。現在、原告も国も控訴しています。
安全保障の名の下で基地村ではどのように性が管理されたのでしょうか。管理されてきた基地村女性たちは裁判で何を訴えたのでしょうか。また長く社会的に認知されてこなかった基地村女性たちが起こした裁判にはどのような支援活動が行われているのでしょうか。
本年度の研究大会では、基地村女性裁判の支援団体で活動してきたアンギム・ジョンエさんと、日本軍「慰安婦」問題などの研究を続けてきたイ・ナヨンさんをパネリストとしてお迎えし、「基地村女性」裁判をめぐって議論したいと思います。どうぞ奮ってご参加下さい。
春季研究会「戦争と女性、芸術の 力」のお知らせ
春季研究会を 下記 の通り開催いたします。みなさまのご参加をお待ちしております。
報告① 志真斗美恵さん
「ケーテ・コルヴィッツ〜平和を求めて」
報告② レベッカ・ジェニスンさん
「新自由主義」の時代におけるパフォーマンス・アートの可能性〜山城知佳子の作品を中心に」
月日: 2017年 3月 4日(土 )
時間: 13 :30 ~17 :00
会場:フェリス女学院大緑園都市キャンパス 8号館1階 国際交流学部共同研究室
http://www.ferris.ac.jp/access/
<報告者プロフィール>
志真斗美恵さん(法政大学・東京理科非常勤講師)ドイツ文学
著書:『ケーテ・コルヴィッツの肖像』( 績文堂 、2006 年)
『芝寛 ある時代の上海・東京――亜同文書院と企画事件』 (績文堂、 2015年)
訳書:『文化の擁護 1935 年パリ国際作家会議』(法政大学出版局、 1997 年)作業チームの一員として翻訳を担当 1997年)
レベッカ・ジェニスンさん (京都精華大学 人文学部教員)
批評理論 ・ジェンダー批評理論 富山妙子や城知佳など 国内外で活躍しているアーティストについて研究活動中
著書(共同編集):『 Imagination Without Borders: Feminist Artist Tomiyama Taeko and Social ResponsibilityImagination : ResponsibilityImagination Without Borders: Feminist Artist Tomiyama Taeko and Social Responsibility』(Center for Japanese Studies, University of Michigan 2010)、『 Still Hear the Wound :Toward an Asia, Politics and Art to Comeand 』( Cornell University, East Asia Series、2015 )
大変申し訳ありませんが、諸般の事情により、
は、例年のスケジュールから変更し、2016年12月11日(
所は、同志社大学(京都市)です。
2016年度シンポジウム
マイノリティ・女性・人権 ――国際社会の規範から日本の現状を問う――
シンポジスト
近江美保さん(長崎大学)
山崎鈴子さん(部落解放同盟愛知県連合会)
梁 優子さん(アプロ・未来を創造する在日コリアン女性ネットワーク、大阪市立大学人権問題センター)
コメント
元百合子さん(大阪経済法科大学21 世紀社会研究所)
第二次世界大戦終了直後に世界人権宣言が国連で採択されて以降、国家・政府による人権侵害
の甚大さとその広範な被害に対して、国際社会が協力し二度と同様の加害を許さないというルー
ル作りが積み重ねられてきました。国際社会の一員として日本政府もまた、そうしたルールに従
うべき責務があることはいうまでもありません。
ところが、世界人権宣言と同時期に制定された日本国憲法を米国の占領下での「押し付け憲法」
だとして、とりわけその三大原理の一つである平和主義を攻撃する勢力・政治家たちは、他方で、
国際人権規約(社会権規約と自由権規約)や人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約、子どもの権
利条約といった国際人権法の各条約委員会からの勧告に対して不誠実な対応を繰り返してきまし
た。その典型例が、日本軍「慰安婦」問題に対する厳しい勧告への政治家や日本政府の対応とい
ってよいでしょう。
2016 年次大会では、日本もまたその構成員として遵守義務を負うはずの国際的な人権規範の現
在の到達点を確認し、また「外圧」などの表現に象徴されるような、国際的規範や普遍的な価値
に対する日本社会の無理解・無関心を批判的に考察します。国際人権法がどのような歴史から発
展し、また現在の日本社会においてそうした規範を実現していくために、わたしたちにはどのよ
うな行動が求められているのか。そして、現在わたしたちが直面している日本社会の現状をいか
に変革へと導いていくことができるのか。
本大会は、国際人権法の基本的な考え方に立ち返り、日本社会では身近に感じにくい傾向があ
るなかで、マイノリティや女性の立場から人権という価値の重要性について国際社会で、また日
本社会へ発信や研究を続けてきた登壇者の方々と共に考える場になることを目指しています。
2015年12月28日、韓国政府との間で日本政府は、「慰安婦」問題について、「慰安婦」にされた女性たちに対する支援事業を両国が協力して行っていく上で、「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」ことに合意しました。そして、日本政府として「責任を痛感し」、安倍晋三首相は、韓国の元「慰安婦」の方々に「心からのおわびと反省の気持ちを表明する」と、岸田文雄外務大臣は記者会見の場で発表しました。
日本軍「慰安婦」問題に関しては、1991年の金学順さんの勇気ある告発以来、日本の植民地であった朝鮮半島出身の被害者以外にも、旧日本軍が侵略した広範なアジア地域の多くの女性――日本人女性を含む――たちが被害にあったことが、市民による地道な聞き取り調査や資料研究によって明らかになっています。そして、以来四半世紀が経とうとする現在でも、そうした調査研究が継続されています。被害者の方々の「解決」を求める強い願いを支えてきたのは、〈真相究明〉、〈日本政府の法的責任を認めた上での公式謝罪〉、〈市民への歴史教育〉、〈被害者の尊厳回復〉といった、戦時性奴隷制度の解明と解決に取り組むという強い思いです。
この「日韓合意」には多くの問題があります。まず、1993年の「河野談話」によって認められた慰安所制度の強制性、すなわち、慰安所制度が軍による性奴隷制であったという認識を踏まえての「合意」であったのかどうか。「河野談話」以降、多くの研究や資料によって慰安婦制度の強制性について明らかにされています。「河野談話」での認識から後退するようなことがあってはなりません。
安倍首相は朴槿恵大統領との電話会談で謝罪した、と発表されていますが、謝罪は公式に、被害者の方々に対してされるべきものです。またそのような電話での謝罪によって、日本政府の法的責任が曖昧にされてはなりません。
「河野談話」においても約束され、被害者女性たちが強く求めてきた、この歴史を繰り返さないための歴史教育は、安倍首相を中心とした強い政治的な力によって、現在では中学校教科書から「慰安婦」に関する記述が削除されるに至っています。このことになんら言及されない合意には、むしろ、歴史から日本軍性奴隷制度という過去を消し去ろうとする意図が働いているのではないかと思わざるを得ません。
とりわけ、2011年12月、1000回目の日本大使館前水曜日デモを記念して建立された「平和の碑」を、日本政府の威厳を損なうという理由から撤去を日本政府が韓国政府に強く主張している点は、被害者女性たちの尊厳を踏みにじるだけでなく、やはり、彼女たちの存在や記憶を歴史的に葬り去ろうとする強い意志の現れです。さらに、像の撤去を日韓政府が共同で設立する基金への日本政府の拠出金の条件であるという日本政府の要求は、被害女性たちへの侮辱です。
1993年に国会議員となって以来、安倍首相は日本における歴史認識、特に植民地支配と軍国主義の歴史をめぐる認識や教育に対して、政治的な介入を繰り返してきました。2015年8月の「安倍談話」では日露戦争が「多くのアジアやアフリカの人びとを勇気づけました」と述べるなど、安倍政権は戦前の軍国主義を反省してようやく誕生した日本の平和主義と立憲主義を破壊するという形で攻撃し続けています。
わたしたち「女性・戦争・人権」学会では、これまで世界的な市民レべルの運動と研究が模索しながら見いだしてきた、問題解決をめざした提言に対して、両国政府が真摯に耳を傾け、今後の支援のあり方に関して被害者の女性たちとの対話、解決に向けた努力を積み重ねていくことを強く求めます。過去の国家犯罪に対する「最終的な」解決とは、未来に向けて、国家が犯した人権侵害、非人道的な組織的犯罪を現在において深く反省しながら、その歴史を新たな発見とともに、未来へと継承していくことに他なりません。過去の深刻な国家犯罪について、今後とも真摯に向き合う姿勢を強く求めます
2016年1月12日
「女性・戦争・人権」学会
2015年10月25日(日)
日時:2015年10月25日(日)10:00~
会場:同志社大学 烏丸キャンパス 志高館 SK112教室
(参加費 会員:無料、一般:\1,000、学生/非正規労働者:\500)
○スケジュール
10:00~11:00 総会
11:15~12:15 自由論題発表
「慰安婦」問題とマンガ:
小林よしのり『新・ゴーマニズム宣言』のメディア論
報告者:倉橋 耕平さん(関西大学ほか)
12:15~13:30 ランチ休憩
13:30~17:30 シンポジウム
侵略戦争・植民地支配・ジェンダー:敗戦70年を考える
シンポジスト:長 志珠絵さん(神戸大学)
宮城 晴美さん(琉球大学)
吉見 義明さん(中央大学)
18:00~20:00 懇親会 会場未定
(懇親会費 会員/一般:\5.000-、学生/非正規労働者\2,000-)
○自由論題発表
報告者 倉橋 耕平さん(関西大学ほか)
タイトル 「慰安婦」問題とマンガ:小林よしのり『新・ゴーマニズム宣言』のメディア論
報告要旨
「慰安婦」問題に対する保守言論がメディア上でどのように展開されたか。「慰安婦」問題に関わる言説は数多いが、メディア研究は非常に少ない。本稿はこの問いと状況に対して、「慰安婦」問題を扱った小林よしのりの『新・ゴーマニズム宣言』を対象とする。従来の研究では、同作品の内容批判、文法分析、読者分析を行ってきたが、この作品がおかれた「メディア」の文脈を検討してこなかった。しかし、メディア=器の違いが作品の社会的意味を変えるのならば、この視座から再度同作品と先行研究を検討する必要がある。
分析の結果次の知見が得られた。同作品は雑誌が展開する歴史修正主義のメディアキャンペーンに乗じて連載をし、マンガであるにもかかわらず、単行本を「書籍」として流通することで「話題書」としての地位を位置づけられることとなった。また、連載時と単行本とで読者投稿の掲載状況を変えることによって、すなわち、この二つの時間差のある媒体を用いて、それぞれ異なる読者に対して「アジール(対抗言論の自由空間・領域)」を提供したかのような印象を保つ仕組みを保有していることが析出された。
キーワード:「慰安婦」問題、メディア論、マンガ、歴史修正主義
〇2015年度シンポジウム
侵略戦争・植民地支配・ジェンダー
~~~敗戦70年を考える~~~
パネリスト
長志珠絵さん(神戸大学)
宮城晴美さん(琉球大学)
吉見義明さん(中央大学)
要旨
日本の敗戦から70年を迎えた今年2015年、立憲主義、民主主義、そして平和主義が安倍政権下で破壊され、また辺野古と東村高江の米軍基地建設問題では沖縄の人びとの民意が踏みにじられています。米軍基地建建設強行に象徴されるように、多くの矛盾を孕みつつもなんとか維持されていた理念としての立憲民主主義が、安倍晋三首相の歪んだ歴史認識と政治信条によって崩壊の危機に晒されています。
立憲民主主義が日本社会に本当に根づいているのか否かを測るバロメーターとして、ジェンダー平等がどれほど達成されているか、そして、戦争や暴力を許さない政治文化がどれほど浸透しているかが挙げられるでしょう。そうであれば、わたしたちの学会の中心的テーマの一つである日本軍「慰安婦」問題にいかに日本社会や政治が対応してきたかを振り返ることは、敗戦後の立憲民主主義の実態を批判的に考えることと密接に関係しています。
敗戦後70年である今年が、日本における立憲民主主義の危機の年であると同時に、日本軍「慰安婦」問題を解決しようとする運動に対してこれまでにない厳しい攻撃が続けられた年であることは、決して偶然ではありません。
「戦後」70年の歩みとはなんだったのか。安倍首相が頑なに否定しようとする植民地支配と侵略への責任と謝罪の問題にどのように取り組むか。1991年金学順さんの告発以降大きく進展した日本軍「慰安婦」問題をめぐる歴史研究、日本軍「慰安婦」問題解決に向けた市民の運動、平和と脱軍事化を求める国際連帯などを通じて、何度もわたしたち市民は問い返さなければならないでしょう。
そこで、そうしたわたしたちの問題意識に相応しいパネリスト三人を2015年度大会にお迎えして、日本軍「慰安婦」問題、植民地支配と侵略の問題を中心に、じっくりと日本社会・日本政治、また東アジアの政治について議論したいと考えます。
2015年10月25日(日)
日時:2015年10月25日(日)10:00~
会場:同志社大学 烏丸キャンパス 志高館 SK112教室
(参加費 会員:無料、一般:\1,000、学生/非正規労働者:\500)
○スケジュール
10:00~11:00 総会
11:15~12:15 自由論題発表
「慰安婦」問題とマンガ:
小林よしのり『新・ゴーマニズム宣言』のメディア論
報告者:倉橋 耕平さん(関西大学ほか)
12:15~13:30 ランチ休憩
13:30~17:30 シンポジウム
侵略戦争・植民地支配・ジェンダー:敗戦70年を考える
シンポジスト:長 志珠絵さん(神戸大学)
宮城 晴美さん(琉球大学)
吉見 義明さん(中央大学)
18:00~20:00 懇親会 会場未定
(懇親会費 会員/一般:\5.000-、学生/非正規労働者\2,000-)
○自由論題発表
報告者 倉橋 耕平さん(関西大学ほか)
タイトル 「慰安婦」問題とマンガ:小林よしのり『新・ゴーマニズム宣言』のメディア論
報告要旨
「慰安婦」問題に対する保守言論がメディア上でどのように展開されたか。「慰安婦」問題に関わる言説は数多いが、メディア研究は非常に少ない。本稿はこの問いと状況に対して、「慰安婦」問題を扱った小林よしのりの『新・ゴーマニズム宣言』を対象とする。従来の研究では、同作品の内容批判、文法分析、読者分析を行ってきたが、この作品がおかれた「メディア」の文脈を検討してこなかった。しかし、メディア=器の違いが作品の社会的意味を変えるのならば、この視座から再度同作品と先行研究を検討する必要がある。
分析の結果次の知見が得られた。同作品は雑誌が展開する歴史修正主義のメディアキャンペーンに乗じて連載をし、マンガであるにもかかわらず、単行本を「書籍」として流通することで「話題書」としての地位を位置づけられることとなった。また、連載時と単行本とで読者投稿の掲載状況を変えることによって、すなわち、この二つの時間差のある媒体を用いて、それぞれ異なる読者に対して「アジール(対抗言論の自由空間・領域)」を提供したかのような印象を保つ仕組みを保有していることが析出された。
キーワード:「慰安婦」問題、メディア論、マンガ、歴史修正主義
〇2015年度シンポジウム
侵略戦争・植民地支配・ジェンダー
~~~敗戦70年を考える~~~
パネリスト
長志珠絵さん(神戸大学)
宮城晴美さん(琉球大学)
吉見義明さん(中央大学)
要旨
日本の敗戦から70年を迎えた今年2015年、立憲主義、民主主義、そして平和主義が安倍政権下で破壊され、また辺野古と東村高江の米軍基地建設問題では沖縄の人びとの民意が踏みにじられています。米軍基地建建設強行に象徴されるように、多くの矛盾を孕みつつもなんとか維持されていた理念としての立憲民主主義が、安倍晋三首相の歪んだ歴史認識と政治信条によって崩壊の危機に晒されています。
立憲民主主義が日本社会に本当に根づいているのか否かを測るバロメーターとして、ジェンダー平等がどれほど達成されているか、そして、戦争や暴力を許さない政治文化がどれほど浸透しているかが挙げられるでしょう。そうであれば、わたしたちの学会の中心的テーマの一つである日本軍「慰安婦」問題にいかに日本社会や政治が対応してきたかを振り返ることは、敗戦後の立憲民主主義の実態を批判的に考えることと密接に関係しています。
敗戦後70年である今年が、日本における立憲民主主義の危機の年であると同時に、日本軍「慰安婦」問題を解決しようとする運動に対してこれまでにない厳しい攻撃が続けられた年であることは、決して偶然ではありません。
「戦後」70年の歩みとはなんだったのか。安倍首相が頑なに否定しようとする植民地支配と侵略への責任と謝罪の問題にどのように取り組むか。1991年金学順さんの告発以降大きく進展した日本軍「慰安婦」問題をめぐる歴史研究、日本軍「慰安婦」問題解決に向けた市民の運動、平和と脱軍事化を求める国際連帯などを通じて、何度もわたしたち市民は問い返さなければならないでしょう。
そこで、そうしたわたしたちの問題意識に相応しいパネリスト三人を2015年度大会にお迎えして、日本軍「慰安婦」問題、植民地支配と侵略の問題を中心に、じっくりと日本社会・日本政治、また東アジアの政治について議論したいと考えます。
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