沖縄県で続発する米兵による性暴力とその隠蔽について日米政府に強く抗議し、日米軍備強化に反対します

 

 2024年6月25日、沖縄県の報道機関が、沖縄県内でブレノン・ワシントン米空軍伍長が16歳未満の少女を誘拐し、性的暴力をふるった罪で裁判が開かれることを報道しました。この事件は2023年12月24日に起こっていたもので、すでに被疑者は2024年3月27日に起訴されていたこともわかりました。

 日米安全保障条約の下で日本に駐留している米兵による犯罪は重大な問題です。特に在日米軍基地の約7割が集中している沖縄県では住民の日々の生活の安全の保障に直接、影響を及ぼす問題です。それにもかかわらず、日本政府は事件について沖縄県に知らせていませんでした。続く報道では2023年から2024年5月までに米軍関係者によって5件の性暴力事件が起こっていたこともわかりました(起訴2件、不起訴3件)。これらについても日本政府は沖縄県に知らせず、公表もしていませんでした。沖縄県警は警察庁に報告はしていましたが、沖縄県には報告していませんでした。外務省沖縄大使は、政治問題になることを懸念したために公表しなかった、と述べました。

 しかし米軍が沖縄に駐留していることこそ、日米の安全保障条約によるもので、まさに政治問題です。日本政府の危惧は、沖縄県名護市辺野古での新たな米軍基地建設に反対する公約を掲げてきた玉城デニー知事と沖縄の人々が米軍駐留や沖縄への自衛隊配備の強化を問題にすることを避けたかったというものでしょう。実際に、2023年からは、辺野古の新基地建設に関して沖縄県の訴えを無効にするような日本政府による代執行、石垣・与那国島への自衛隊配備、うるま市の自衛隊基地へのミサイル配備、駐日米大使の与那国島訪問など、沖縄県での日米軍備強化が急速に、強引に進められています。

このような日米同盟の維持を優先させるために、沖縄に住む人々、特に性犯罪のターゲットとされる女性や子どもの安全と尊厳がないがしろにされることに、私たちは強く抗議します。そして、日本政府による性暴力事件の隠蔽によって被害者が沖縄県によるケアや保護を受ける機会を失ったかもしれないことを深く懸念します。

 2023年12月の事件は被害者関係者からの通報によって沖縄県警が米軍に照会し、ワシントン被告が逮捕されました。しかし沖縄県警による捜査は任意で行われ、被疑者の身柄の引き渡しの要求をしていませんでした。7月11日に行われた公判で、ワシントン被告は行為を認めたものの、合意の上だったとして、容疑を否認しています。このような状況でも尚、被疑者は保釈され、嘉手納基地内にいます。米軍は被疑者のパスポートを取り上げているので逃亡の恐れはない、としています。日米地位協定の刑事裁判権に関する米国の優位性の問題もさることながら、日米地位協定で認められている、日本側への起訴後の被疑者引き渡しや1995年以降に日米間で合意された運用改善の実行さえも行わない日本政府の姿勢は自国の国民保護の責任を放棄するもので、決して許されません。

 沖縄県内では米軍関係者による性犯罪が1945年から続いています。性犯罪は実際に起こった数と明らかになる数との差、いわゆる暗数が大きい犯罪です。その原因の一つは被害がいまだに被害者の恥とみなされる風潮です。日本政府が主要な外交政策の一つとして位置付けている、国連安保理決議1325号の実施政策「女性・平和・安全保障」では、紛争下での性暴力の根絶のために「恥ずべきは被害者ではなく、加害者だ」という認識を広める必要性が国際的に共有されています。しかし、日本政府は度重なる米軍による性暴力に関する情報を隠蔽してきた理由として「被害者のプライバシーの保護」や「被害者の名誉」までも挙げています。これは性暴力を根絶しようとする態度からは程遠いだけでなく、被害者が責められる風潮を助長するばかりです。

2023年12月の事件が明るみになってからも米軍は正式に謝罪をしていません。再発防止策も沖縄県警との協力態勢やこれまで何度も行われているリバティー制度について言及していますが、実効性はなく、再発防止に真剣に取り組んでいるとはとても考えられません。米国政府に対しても、私たちは沖縄県で続発する米兵の性暴力に関して、沖縄県と沖縄の人々に対して正式に謝罪するように求めます。そして、駐留米軍関係者による性暴力について調査を行い、防止のための実効性のある対策を講じることを求めます。

戦争や軍事基地と女性の人権の問題に取り組んできた「女性・戦争・人権」学会は、日米軍備強化に反対し、米兵による性暴力を絶対に許しません。

 

2024年8月28日 「女性・戦争・人権」学会

 


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